トウモロコシの自家採種

トウモロコシの種 自家採種
トウモロコシの種

トウモロコシの概要

トウモロコシの来歴

イネ科トウモロコシ属。

トウモロコシはメキシコ、ペルー、ボリビアなどでは古くから栽培されていたため、中南米が原産地と考えられていますが、詳細な地域は特定されていません。

インディオの人たちは古くからトウモロコシを主食として栽培していましたが、一つの畑でも多くの個体差があり、品種として識別できないくらい雑多なものを栽培していました。一つの穂に定番の黄色から、赤・白・青・緑など、日本では見ることがない色のトウモロコシの粒がついています。雑多なトウモロコシを栽培していたのは、気象などの栽培条件が毎年変わる中でどれかがその年の条件に合えばよいという、危機分散のためです。単一品種しか育てていないと、条件によって豊作だったり凶作だったりと収量の差が大きくなります。雑多な品種を栽培するのは、収量をなるべく均一化(凶作の影響を少なく)するためで、経験から遺伝子多様性の重要性を知っていたのだと思われます。

トウモロコシの種類は大きく6つに分類され、フリントコーン、デントコーン、ポップコーン、ソフトコーン、ワキシーコーン、スイートコーンがあります。トウモロコシを粉にして主食としている人たちはフリントコーンやソフトコーンを、家畜の飼料としてはデントコーンを栽培しています。日本で売られているのはほぼスイートコーンです。日本で昔に栽培されていた、くろもち・しろもちトウモロコシはワキシーコーンです。ポップコーンはお菓子の原料として栽培されています。

栽培・採種している品種

私が栽培・採種している品種は、スイートコーンのモチットコーン(自然農法国際研究開発センター)のみです。数年前までは、ワキシーコーンの黒もちとうもろこし(高木農園)と白もちとうもろこし(高木農園)を栽培・採種していましたが、モチットコーンに切り替えてからは交雑するためやめてしまいました。黒もちとうもろこしと白もちとうもろこしは同じワキシーコーンなので、多少混ざっても色がカラフルになる程度しか影響はなかったのですが、モチッココーンはスイートコーンなので交雑すると特性が変わるためです。

トウモロコシの自家採種

受精方法・交雑の注意点

トウモロコシは茎の先端に雄穂がつき、葉のわきから雌穂が出ます。雄穂は雌穂より1~3日先に成熟して花粉を出す他殖性の強い作物です。トウモロコシの花粉は風で飛ばされ受粉します。風が強い時は300~500mも飛散しますが、この範囲に他の品種がなければ交雑の心配はありません。もし近くに他の品種が栽培されていれば、2週間程度種まきをずらして出穂の時期をずらすか、袋がけをして人工交配を行い、交雑を防ぎます。デントコーンやフリントコーンなどの花粉がスイートコーンに受精すると、キセニアという現象によってスイートコーンの甘みがなくなってしまいます。そうなった場合、食用・採種ともに適さなくなります。

母本選抜の基準

スイートコーンは、少数の株から採種し続けると近交弱勢が起こりやすい作物です。理想をいえば50株以上からの採種が望ましいらしいのですが、家庭菜園ではそんなに栽培しません。それでも最低限10株以上栽培し、採種するようにしてください。採種果の基準は以下の通りです。

  • 葉に食害や奇形が無い
  • 生育がよい
  • 茎が太くて長い
  • 収穫期に入っても倒伏していない
  • 果実が大きい
  • 果実にアワノメイガなど害虫の食害が無い

交配と採種の管理

交雑の心配がない場合

500m以内に他の品種や種類のトウモロコシがなければ交雑の心配はないので、採種用に選抜した株の雄穂を開花前に切除して自殖を防ぎます。

雄穂切除

交雑の心配がある場合

雌穂は絹糸が外に出ていないものに袋がけを行います。雌穂に袋をかける前に、絹糸の先端を苞葉とともにハサミで切り揃えると、人工交配後の実つきがよくなります。雄穂は先端からわずかに花粉が出ているものを選んで袋がけします。スイートコーンの花粉は風で容易に飛散するため、袋がけ前の雄穂には他品種の花粉が付着している可能性があります。花粉は24時間経つと死滅するので、袋がけは交配予定時間の24時間以上前に行います。

雄穂の袋がけから24時間後に交配が可能ですが、雌穂は切りそろえた絹糸が3~4cmくらいの長さにそろうまで交配を待ちます。天気が良ければ、袋がけから2日程度で人工交配がやりやすくなります。スイートコーンは晴れた日中であればいつでも交配が可能です。同一株から採種した花粉で交配すると近交弱勢になるおそれがあるので、交配する花粉は同一品種の他の株から採取したものを使います。雄穂の袋を外して、雄穂をゆらして袋の中に花粉を落とします。複数株から採取した花粉をまとめてよく混ぜます。雌穂の袋を外し、この花粉を雌穂の絹糸にふりかけ交配させます。交配後の雌穂は種の収穫まで袋をかけたままにしておきます。

雌穂袋掛け

採種・乾燥・保存

採種・乾燥

交配してから45~50日で種として収穫できます。穂の苞葉をむき、雨の当たらない風通しのよい場所で1~2ヶ月乾燥します。乾燥が完了したら、穂から病虫害や障害を受けた粒を取り除いてから脱粒します。これを天日で2~3日干して、さらに病虫害粒や小さな粒を除いて調整します。

スイートコーン:黄

スイートコーンの乾燥した穂

ワキシーコーン:黒

ワキシーコーン(黒)の乾燥した穂

ワキシーコーン:白

ワキシーコーン(白)の乾燥した穂

保存

スイートコーンの種の寿命は通常2~3年程度ですが、保冷・乾燥条件下であれば5年程度は十分使用可能です。

トウモロコシの種

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コメント

  1. マサト より:

    トウモロコシの自家採種の情報を発信して頂き、誠にありがとうございます。
    トウモロコシを自家採種予定です。
    品種はモチットコーンです。

    本年は交雑のリスクがあるので、ご紹介頂いた袋をかけて人工授粉したいと思います。
    袋ですが、どのような袋を使用するのがお勧めかを教えて頂くことは出来ますでしょうか。
    また、袋がけしたままでハクビシン食害対策にもなりますでしょうか。

    もし宜しければ教えて頂ければ幸いです。
    宜しくお願い致します。

    • Kojiro より:

      コメントありがとうございます。長らくアクセスしていなかったため、返信できず申し訳ありません。

      ご質問の回答ですが、果樹用の袋が一番使い勝手がよかったです。現在はブドウ用の袋を使用しています。
      私は交雑防止目的で採種果以外には袋がけをしておりませんので、ハクビシンにはどれだけ効果があるかは分かりません。ハクビシンの対策としては、使用済みの黒マルチを捨てずに取っておいて、トウモロコシの周りを塀のようにぐるっと囲っています。ハクビシンからはトウモロコシが見えなくなるようで、以降の食害は無くなりました。ネットで囲ったこともありますが、こちらはネットをくぐられて食害に遭いました。