自家採種に失敗しないためのポイント

完熟キュウリ 家庭菜園
完熟キュウリ

作物から適当に採種した場合、発芽しなかったり、弱々しく成長したり、親とは全く違った特性になったりと、思ったように作物が育たないことがあります。主な原因として、他品種との交雑、種が十分に熟していない、種が病気にかかる、といたことが挙げられます。

他殖性の作物は自然交雑しやすい

自家採種で失敗する第一の原因は、交雑によって元の品種とは別の品種になってしまうことです。虫や風によって、目的とは違う品種や種類の花粉と交配してしまうために起こります。親の特性とは異なった品種となったとしても、それもまたよし、とするのも家庭菜園で自家採種する醍醐味ではあります。とはいえ、自分で新品種を作る前に、まずは交雑しないための基本を押さえましょう。

交雑を防ぐには、作物の生殖方法を知ることが大切です。作物の受粉・受精には、虫や風の力を借りて他の花や株からの花粉で受粉・受精する他家受精(他家受粉)と、同じ花の花粉で受粉・受精する自家受精(自家受粉)の二つがあります。前者を他殖性作物、後者を自殖性作物といいます。他殖性の場合は、遺伝的な変異を小さくしようとして固有の形質を維持しようとする方向と、逆に多様な遺伝的な変異を生み出そうとする方向から、同じ花や株同士では受粉できないようになっていると考えられています。自殖性の場合は、基本的には同じ花の中で受粉しますが、虫によって違う花の間で受粉する場合もあります。それぞれの作物の生殖方法に合わせて採種しないと、狭い面積の家庭菜園では目的とは違う花粉と自然交雑して、別の品種になる恐れがあります。それを防ぐため、人工交配や隔離栽培を行わなければなりません。特にアブラナ科の野菜は複雑で、遺伝子のゲノムタイプによって「ハクサイ・コマツナ・カブ・キョウナ群」、「カラシナ・タカナ群」、「ダイコン群」、「キャベツ群」に分かれ、それぞれの郡内では互いに交雑します。

受精方法 隔離距離 主な作物
ほぼ完全な自殖性 数m トマト、インゲン、ダイズ、ササゲ、エンドウ、ラッカセイ、イネ、コムギなど
自殖性だが少し他殖もする 10~50m ナス、ピーマン、レタス、ゴボウ、オクラなど
自殖もできるがかなり他殖もする 100~500m キュウリ、メロン、マクワウリ、カボチャ、スイカ、ソラマメ、ネギ、タカナ、カラシナ、ナタネ、シソ、エゴマなど
ほぼ完全に他殖性 1km以上 ダイコン、カブ、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ツケナ類、ニンジン、トウモロコシ、タマネギ、ソバなど

表1:受精方法と自然交雑を防ぐための隔離距離

 

また、品種の特性や強さを維持するためには、作物の種類によって採種に必要な個体数(株数)があるので、それを守ることも必要です。株数が少ないと、近交弱勢により作物の特性が弱っていきます。

少数個体で自家採種してもあまり力が落ちない作物 ナス科作物(トマト、ナス、ピーマンなど)、ウリ科作物(キュウリ、スイカ、カボチャなど)、インゲン、ダイズ、ササゲ、エンドウ、ラッカセイ、イネ、コムギなど
20個体以上で自家採種した方がよい作物 アブラナ科作物(ダイコン、カブ、ツケナ類、キャベツ、ハクサイなど)、ネギ、ソラマメなど
50個体以上で自家採種した方がよい作物 ニンジン、タマネギ、トウモロコシなど

表2:品種の強さや特徴を維持するために必要な株(個体)数

採種するには種が熟していなければならない

失敗の二つ目は、種の充実が悪くなる管理をしてしまうことです。その原因は二つあり、着果期間の不足による未熟果と採種果の栄養不足です。キュウリやナスなどは、食用にする場合は未熟果で収穫しますが、採種するには完熟させる必要があります。種の発芽力は受精してから一定の期間かかって作られるためです。完熟するまでの期間は野菜によって違いますが、完熟した種ほど活力が高いので、発芽速度が速く発芽率もよく、湿度や温度など環境条件に対する抵抗力が強いので寿命も長くなります。また、採種果以外の花や果実が多くついていると、採種果が栄養不足になり充実した種がとれなくなります。そのため、採種果が肥大してきたら、定期的に摘花や摘果を行わなければなりません。

私は、ナス・トマト・ピーマン・キュウリは8月くらいに採種果を決めてひもなどで印をつけておき、採種果以外の果実は早めに収穫し、霜が降りる前までつけっぱなしにしています。カボチャ・スイカ・ウリは食用栽培で収穫した時に種を取ります。ネギ・ニンジン・ダイコン・アブラナ科などの野菜は、越冬させ春に花が咲き、梅雨頃に種を取ります。雑穀や豆類は種を食べるため収穫=採種となります。

種類 発芽力が作られる期間 実用的な発芽力が作られる期間
ナス 45 55~60
トマト 35 45~50
ピーマン 45 55~60
キュウリ 30~35 45
カボチャ 35~40 50
スイカ 25 45
シロウリ 20 35
マクワウリ 20~25 35
インゲン 20 35~40
ササゲ 15 30~35
タマネギ 15~20 40~45
ネギ 20 45
ニンジン 30~35 45~50
ゴボウ 15~20 35~40
ハクサイ 55
ダイコン 55~60
キャベツ 55~60

表3:種が成熟するのに必要な開花・受粉からの日数

 

種を病気から守る

三つ目は種を病気から守ることです。それには二つのポイントがあり、採種までの期間と採種後の種洗いの時です。第一のポイントは、採種まで健全に育てて、病害のない株や採種果から採種することです。これは食用の栽培と同じで基本になります。果菜類のトマトやキュウリは、完熟した果実から採種するとき水洗いを行います。種の周りについているゼリー質をとるため、果肉や果汁と一緒に一昼夜発行させてから種を水洗いして天日で乾燥させますが、すすぎ洗いや乾燥が不十分だと種にカビが生えてしまいます。

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