自家採種のメリット・デメリット

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自家採種することのメリット

畑の土や地域の気候、育て方に順応する

植物には、気候や土等が異なった環境に移されると、環境に適応するよう体質を変化させて成長し、種を残す能力があります。その能力を「順化」といいます。順化の性質を利用して、畑の土壌に適した種に、住んでいる地域の気候に適した種に、自分の育て方に適した種に、世代を経るごとに適応していきます。

無肥料・少ない肥料で育てることができる

例えば大根などの根菜類は、根が土の影響を直接受けるため、同じ品種でも土の状態に影響を受けて収量や品質が変化し、種をまく時期によって病気や害虫の付き方が違ってくるなど、生育の変化を容易に観察できます。採種条件が違う大根を少ない養分で不耕起栽培すると、同じ品種でも生育が違います。生育が良いものを選抜し自家採種を繰り返すことで、年々生育が改善された大根になっていきます。

このように、無肥料・不耕起という一般的に作物の育成に不利な条件下でも、生育の良いものを重点に選抜を続ければ、少ない養分でも十分に生育するよう適応した種に変化していきます。

虫がつきにくくなり、病気にも強くなる

大根で生育が改善された例を挙げたように、乾燥や湿害などの環境ストレスにあっても健全に育成したものを選抜すると、病害虫に強くなることがあります。植物は自身の免疫力を高めることで防御する機能を持っています。植物は、生育環境の変動、病原菌の感染、虫による食害など、様々なストレスにさらされています。これらのストレスに対し、植物ホルモンを分泌して独自の自己防御機構で対抗しています。そうした環境に適応できた個体が生き残って世代を更新します。適応できた個体を選抜し、生殖方法に合わせて採種し、自身の畑に合った品種を維持していくことで、結果として病害虫にも強くなっていきます。

良質な有機無農薬種子を入手

日本では有機栽培が注目をされていますが、有機栽培の環境で採取した種子というものはありません。種の袋に採種地が記載されていますが、ほぼ外国で国内のものすら少ない状態です。つまり、外国でどんな方法で採取したかも分からない種を購入していることになります。

自家採種の技術を身に着けることで自身で種を育てることができ、種の段階から安全・安心な農作物を育てることができます。

種代を節約

農業資材の高騰、人件費の高騰、新品種開発競争の激化などにより、種の価格が上昇傾向にあります。交配種のF1品種は一粒数十円するものもあります。自家採種は手間はかかりますが、種代は節約できます。

自家採種することのデメリット

種を採るまでが大変な作物がある

採種が楽なものとして、種を食べる穀物(雑穀や麦など)や、完熟した果実を食べるトマトやスイカが挙げられます。一方で、採種が大変なものとして、植え替えて越冬させ花を咲かせ種を採る根菜やアブラナ科の葉物が挙げられます。私たちが食べている野菜は、常に採種一歩手前のものばかりではありません。食べるためではなく、種を採るための栽培をしなければならないことは、非常に手間がかかります。

長期間畑の一画を占領してしまう

種を採るための栽培をすることは、通常の収穫以降も作物を育てなければなりません。同じ株の雄花と雌花で受粉しない(自家不和合性の)作物の場合、品質の特性を維持するために栽培しなければならない株数が決められています。家庭菜園の面積が限られている場合、種を採るために作物の収穫よりも長い期間、畑の一画を占領し続けなければなりません。種を採るよりも、別の作物を育てたい場合もあると思います。

全ての作物は種から育てないといけない

種を採るということは、苗も種から育てなければなりません。適切な時期に直播きする作物であればいいのですが、トマト、ナス、ピーマンなどの果菜類は、温度管理をしながら、種の発芽から畑への定植までの長期間、育苗しなければなりません。

自家採種の損得まとめ

費用はかかっても種は買った方が楽、育苗は面倒だから苗を買った方が楽、限られた家庭菜園のスペースは食べるための作物を育てたい、思う人は少なからずいると思います。種が発芽しない、育苗に失敗して苗が枯れてしまう場合があるかもしれません。要は、非常に手間暇がかかります。

一方で、私個人の考えですが、種を採り続けて自分の家庭菜園に種を順化させていくこと、出所のはっきりした安心な種を無料で入手できることは、上記負担を上回る利益をもたらしてくれていると実感しています。まずは種を採るのが簡単な作物からでも始めてみてください。

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