初心者でもできる野菜の育苗

育苗した苗 種からの育て方
育苗した苗

自家採種をしても、自分で種をまいて発芽させ、苗を育てることができなければ意味がありません。ここでは、主に果菜類の播種、発芽、育苗について、失敗しにくい丈夫な苗の育て方を紹介します。

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果菜類の種まき・育苗を行うには温度管理が必要

農家では、電熱線を利用した保温、堆肥の発酵熱を利用した温床、ビニールトンネルやビニールハウスの利用といった、個人レベルの家庭菜園ではそろえることが出来ない設備を使用して温度の管理を行い、種まきや育苗を行っています。そんなものはとても準備できないので、我々が種まき・育苗を行うために利用する温度管理の手段は、ずばり「日光」です。

「日だまり育苗」と名付けられているこの方法は、日当たりのよい建物の南側に苗を置き、直射日光によって得られる地熱を利用して育苗することです。夏野菜の生育適温は20~25度といわれています。春先の陽気のいい日に苗に日向ぼっこをさせ、その熱で土を温め苗を育てます。春先の晴れた日中は暖かいとはいえ、日が落ちてくると一気に気温が低下します。このまま外へ出したままであれば低温で苗が枯れてしまいますので、夜には苗を家の中へ退避させ、夜間の冷え込みから苗を守ります。ひだまり育苗の苗は、直射日光や外気、風にさらされることでストレスに強くなり、定植後の路地環境への適応力の強い苗になります。

日だまり育苗で種から野菜を育ててみる

種から野菜を育てようとしたにも関わらず、全く発芽しなかった、発芽した苗が枯れてしまった、という失敗は珍しくありません。自家採種する手間もそうですが、育苗するにも手間がかかり、失敗ばかりだと「苗を買った方が楽でいい」と思う人も少なくないと思います。これでは自家採種する意味が無くなってしまいます。

夏野菜の果菜類の場合、特に低温期の育苗の失敗で多いのは、水のやりすぎと温度不足が原因です。これらをふまえ、日だまり育苗を行った結果をご紹介します。

種まきは小さな容器で行う

日だまり育苗は、日光の熱エネルギーで土を温めて、発芽や生育に必要な地熱を確保します。同じ熱量を得たとしても、種をまいた容器の土の量が少なければ地温が上がりやすくなります。低温期はなかなか地温が上がらないため、発芽をさせるときはポリポットに種をまくのではなく、より土の量が少ない72穴のセルトレー(プラグトレー)にまいて育苗を開始します。

ごく少量の育苗では、スーパーで売られているキノコなどが入っている黒い食品トレーや、色付きの豆腐パックの底に水抜き用の穴をあけて、そこに土を入れてまいてもOKです。この方法は以降「箱まき」と呼びます。

育苗で使用する土は市販の有機培養土で

私を含む初心者は、育苗で使用する土は市販の有機培養土を使用することがベストです。タキイの50lでxxxx円もするような培養土ではなく、ホームセンターのプライベートブランドのそこそこの値段の培養土を使用しています。畑の土には立ち枯病菌などの土壌伝染性の病原菌がいます。先に水のやりすぎ温度不足が失敗の原因だと説明しましたが、過湿+低温の条件でこれらの病原菌が活発になり、育苗での発芽不良の原因になります。育苗用土は10.5cmのポリポットでおよそ500mlですので、必要量分の有機培養土を用意してください。

種まきは最高気温が16度になってから

日だまり育苗では、果菜類の種まきは最高気温が16度以上になる時期から可能です。種をまく時期の決め方は以下の2通りです。

定植時期から育苗期間を逆算して決める

この方法は、比較的育苗期間の短いウリ科作物(カボチャ、キュウリ、メロンなど)に適用できます。おおよその目安は下記の10.5cmポリポットを使用した時の育苗期間の表を参照してください。例えば、キュウリの苗を5月5日に定植したい場合、育苗期間は25~30日になるので5月5日から逆算すると、種まきの時期は4月5日~10日頃になります。

野菜 種まきからの日数 地上部の生育
キュウリ、メロン・マクワウリ、スイカ 25~30日 本葉2~3枚
カボチャ 20~25日 本葉2枚
トマト 45日 本葉5~6枚
ナス、ピーマン 50~55日 本葉4~5枚

表1:10.5cmポリポットを使用した時の育苗期間の目安

最高気温が16度以上になってから種まきをする

この方法は、育苗期間が長いナス科(ナス、ピーマン、トマト)に適用します。種を早くまけば苗は大きく育つと思う方は多いと思いますが、最高気温が低い内に種をまいても、土の温度が十分に上がるようきちんと温度管理ができないと、発芽しなかったり生育しなかったりと、育苗が失敗する原因になります。

温度管理の手段としては、

  1. 暖かくなるまで待ってから、日の当たる場所で育てる
  2. 簡易温室で育てる

が挙げられます。簡単で失敗しないのは1、難しいが早めに育苗できるのは2です。温度管理が出来ず、発芽しない、苗が育たない場合は、十分に暖かくなるまで待ってください。簡易温室については、試行錯誤した内容を後で紹介します。

水はやりすぎてはいけない

自然界では、毎日雨が降って植物に水分補給がされるわけではありません。土壌の地下深くから水が供給されており、植物はそこから水分補給を行っています。しかし、育苗時にはセルトレイやポリポットなどの小さな入れ物にしか土が入っていませんので、毎日水をやる必要があります。手間暇をかけたがる人ほど、土が乾いていると植物によくないと思って、こまめに土が乾かないよう水やりをしがちです。そうすると、土が一日中湿って地温が上がりにくく発芽に必要な温度が確保できなかったり、育苗培養土内の酸素が不足して種が酸欠になり発芽不良を起こしたりします。地温の低下と過湿をふまえて、育苗に失敗しない水やりのポイントは次の2つです。

水温

雨水や水道水をそのままかけると、せっかく日光によって温められた土の温度が下がってしまいます。低温期の育苗の水やりには、30~40度くらいのぬるま湯を使います。こうすれば、水やりによる地温の低下を防ぐことが出来ます。お湯は熱すぎるのでかけないでください。

水量

水やりは地温が上がり始める朝にたっぷりと行い、夕方に土の表面がうっすら乾く程度になるのが適量です。一日のうちに乾湿を繰り返すよう水の管理を行います。曇天や雨天の場合は、土の乾き状態を確認して湿っているようなら水やりを控えます。

苗は出来るだけ日当たりの良い場所に置く

苗は出来るだけ日の当たる場所に置きます。北側が白壁で南側に障害物がない場所が理想的です。白壁を背にすると日光が白壁に反射して苗に反射光が当たり、地温の上昇や光合成の活発につながります。白い衝立のようなものでも代用できます。低温期は日が暮れると急激に地温が低下するので、可能であれば日暮れ前、日暮れ後であればなるべく早めに苗を室内に入れ、夜間は室温で管理します。夜間の温度は10度以上(15度以上が理想的)を確保してください。これを毎日繰り返します。

とはいえ、私のようなサラリーマンが、いつも夜になって気温が低下する前に家に帰れるわけではありません。夜の低温に当たって苗が枯れたことがあってから、簡易温室で管理しています。

簡易温室の作り方と管理

今までに試した簡易温室を紹介します。

ビニール温室

ビニール温室

サイズによりますが、金額はホームセンターで2000~4000円。セルトレーやポリポットを入れて保温します。以下の点に注意して管理してください。

  1. 日当たりの良い場所に置いておくこと。
  2. 前面のファスナーを開けておくこと。閉じておくと高温で苗が枯れてしまう。
  3. 外に出しておく場合は、重たい石やコンクリートのブロックを置いておくこと。ファスナーが開いていると、強風でビニール温室が倒れてしまう。部屋の中なら問題無い。

以上を踏まえて、日当たりのよい室内に置いておき、前面のファスナーは開けて管理すると、失敗しにくいと思います。

衣装ケース

衣装ケース

こちらもサイズによりますが、金額はホームセンターのPBで500円前後。セルトレーやポリポットを入れて保温します。以下の点に注意して管理してください。

  1. 日当たりのよい場所に置いておくこと。
  2. 苗が育つと蓋に当たるため、深さがある形状のものを使用すること。
  3. 日光が当たるように透明なケースを使用すること。
  4. 蓋に穴をあけるか、蓋をずらして置いておくこと。密閉しておくと高温で苗が枯れてしまう。
  5. 外に出しておく場合は、蓋の上に重しを置いておくこと。隙間から風が入るため、強風でケースが飛ばされてしまう。部屋の中なら問題無い。

以上を踏まえて、深さのある透明衣装ケースを日当たりのよい室内に置いておき、蓋をずらして管理すると、失敗しにくいと思います。

育苗箱+蓋

育苗箱+蓋

現在私が主に発芽、育苗している方法で、金額は育苗箱が98円、水受けトレイが198円、育苗箱用透明プラの蓋が298円(DCMカーマで購入、3点セットで500円)。写真の通り、セルトレーやポリポットを入れて保温します。蓋の上に穴が開いていて不織布で覆われているので、室内の日当たりのよい場所に置いておくのであれば、今までのような注意事項は特にありません。

苗の鉢上げ

鉢上げとは、セルトレーや箱まきをして育てた幼い苗を、より大きなポットに移し替える作業のことです。鉢上げ前日の苗は、葉がしおれない程度に乾き気味に管理します。こうすると、鉢上げ後の苗の活着がスムーズにいきます。なお、鉢上げは箱まき苗とセルトレー苗では適期と方法が違います。

野菜 箱まき苗 72穴セルトレー苗
キュウリ、スイカ 本葉1枚目が米粒大 本葉1枚目が10円玉大
メロン・マクワウリ 双葉が展開~本葉1枚目が米粒大 本葉1枚目が10円玉大
カボチャ 双葉が展開 本葉1枚目が10円玉大

(50穴のセルトレー)

ナス、トマト、ピーマン 本葉2枚目が展開始め 本葉3枚目が展開始め

表2:鉢上げ適期の目安

鉢上げしたカボチャの苗

鉢上げしたカボチャの苗

箱まき苗の鉢上げ

箱まきした苗はティースプーンなどで掘り取り、ポットの土に穴をあけて植え替えます。植えるときは根が下に行くように、丁寧に植えていきましょう。このとき、深植えにならないよう注意してください。

セルトレーの場合

セルトレーからの鉢上げは、地上部の葉数だけでなく、根がうっすらと培養土の表面を覆い、土ごときれいに抜ける頃が適期です。セルトレーから苗を根鉢ごと抜き取り、ポットの土に穴をあけて植えます。箱まきよりはセルトレーの方が鉢上げ時に根を痛めることが少なく、鉢上げ後の活着もよくしおれにくくなるので、初心者はセルトレーをお勧めします。

後は定植適期まで育てるだけ

苗が密着してして隣同士の葉が重ならないよう、十分に間隔をとって苗に日光を当ててやります。この作業が遅れると、苗が日光を求めて徒長(茎や葉が通常よりも軟弱に伸びてしまうこと)してしまいます。苗の定植適期は、表1に示した育苗期間を参照してください。一度苗をポットから抜き取ってみて、根が鉢土をうっすら覆っているのを確認出来たら定植が可能です。定植3~5日前から苗を路地環境に慣れさせるため、最低気温が10度以上で遅霜の心配がなければ、夜間も外で苗を管理するようにします。

定植前のピーマン苗

定植前のピーマン苗

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